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  4. Prologue 01

Chapter 1-6


「俺はさんと虫歯を治療しあったり、歯を磨きあったりしたいです!」
「そうですね」
「話を軌道に戻すが、が嗅覚にマッチする幻覚へと加工する作業をするのは15皿ほどでいい」
「なかなかの量がダメになってしまったんですね」
「ああ、30分から20分ほど前の僅かな間でな」
「頑張ってね、。私は初級フロアに行く前に、すてきなロビーをもう少し見て回ってこようかしら」
「そんなに熱心に見ていただけるなんて。ありがとう、ペンステモン。努力が報われますよ」
「あー、やっと行った。これで邪魔者はあと1人」
 まだ彼女が離れきっていない内からヘリオトロープはそんなことを言う。彼女は笑顔のまま肩をすくめるとバッグを抱え直して、歓談する人が多い方向に向かって、ネオンライトと航空機の間を歩いていく。私はペンステモンのことを決してそんな風には思わなかったが、私以外の者を邪険にするヘリオトロープなりの愛情表現に救われている部分もあった。ヘリオトロープがいつも私を露骨に1番に扱ってくれなければ、大切な彼を失う不安から、自分のやりたいことに集中する力さえ失ってしまうだろう。ペンステモンに対して嫉妬すらした可能性もある。
「なんだ、もう1人とは私のことか?」
「すみません、ストロベリーフィールド。これは彼が私との絆に誠実すぎる一種の優しさから出た言葉であって、貴方自身を否定するものではないんですよ」
「いや、否定もしてますよ。生理的に無理」
「ははあ、心に問題でも抱えているのか? どれ、客の愚痴を聞き慣れている私に相談してみるがいい」
「いらねぇー。さん、どうしてこんなヤツを雇ったんですか? 俺だけだと不足だったってことですよね。手料理の努力が足りなかったのかな……個性的な店だって持ってないし。必要ないと思っていた知名度も、さんに魅力的だと思ってもらえるなら上げるべきだったのかな」
「貴方をそんなに思い悩ませてしまうなんて……私はヘリオトロープと一緒にエアリアルスターを楽しみたいと、貴方に楽しんでほしいと思っていたんです。運営にかかりきりでは叶わないですから」
さん……! 俺のことを大切にしてくれて嬉しいです。つまりアイツは雑用ってことですね!」
「私は都合のいい雑用だったのか、〜?」
 丸く収めようとした私の努力が空回ったことを楽しむように、ストロベリーフィールドは試すようにニヤニヤと笑みを浮かべる。
 幸い深刻には捉えられていないようだが、貴重な協力者である彼とブラッドヴェスルズには、敬意と誠意を示さなければならない。

 アイコンタクトで「後でクーポンを渡しますから」と伝えると、驚異の洞察力で私の思考を読み取ってくれたらしく、満足げな表情に変化する。
 修正した層を複製して全ての料理に適用する手抜きは通じないようで、マカロニチーズであろうがプライドポテトであろうが、均一に同じ花の香りになる複雑な変質が起こっていた。

 複数の料理に向き合うほど、バグにしては繊細すぎる印象を受ける。
「なんという花なんでしょうね。香りに詳しくなりたいと思ってはいるんですが」
「俺も匂いで花の名前はよくわからないですね。さんが使ったフローラルの石けんならわかるんですが」
「甘いような薬のような独特な感じがする。ヘリオトロープの花じゃないのか?」
「いいや、サフランだと思う」
 ストロベリーフィールドの勘を静かに否定したのは、私が唯一雇うことができた用心棒、バウンサーのデルフィニウムだった。

「いやー、私はヘリオトロープだと確信してる」
「まぁさんが俺を想うあまり、無意識に同じ名前の花の香りを忍ばせた説ももっともらしいですね」
「そんなこと言ったか?」
 サフランと聞いて私は友人の1人を思い出した。つい先日もこのエアリアルスターに招待したばかりだが、なかなか広い会場を確保したせいか、まだ姿を見ていない。彼は先のフロアに進んだのだろうか?
 彼のチャームは何かの香りを変化させるものではないはずだ。サフランのチャームによって空気や物質が冷えたのを体感していたし、イタズラでこんなことをする人柄ではないと思うが——。
「怪しい女性がいる」
「え、私ですか」
「違う、カメラを回していた。捕まえるか?」
「そのかたは今どちらに?」





















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